ステンレスの主成分は鉄であるにも関わらず、
ステンレスは錆びない金属(厳密には錆びにくい金属)
とされています。では何故錆びにくいのでしょうか。
実はステンレスの表面には、5nm程の不動態皮膜
という極薄の膜ができています。
不動態皮膜とは、ステンレス表面にできる腐食作用に抵抗する酸化被膜
のことでステンレス内部と外気を遮断し直接触れさせ
ないことで、ステンレス内部を腐食から保護することができます。
この被膜は、酸化力のあるものにさらされた場合や、陽極酸化処理
(いわゆる電解研磨)によって生じますが
当然全ての金属に不動態皮膜ができるわけでは
ありません。不動態皮膜ができやすいのは、
アルミニウム、クロム、チタンなどやその合金です。
ステンレスにおいてはクロムが該当します。
つまり、ステンレスは自身に含まれるクロムが
鉄よりも先に酸化することで、内部に酸素を通さない
強固な膜-不動態皮膜を形成するため、
錆びにくいのです。
しかし裏を返せば、ステンレス自身が酸化しない
というわけではないので、何らかの理由で不動態皮膜
ができなければ(不完全であれば)、当然錆びます。
また、この皮膜は傷などで破壊されても、上記の通り
酸化力のあるもの(酸素など)に触れれば直ぐ修復しますが、皮膜を劣化破壊させる環境
(例えば海沿いとか)では、皮膜が劣化することによって錆びます。
クロムの含有量が少ないものも錆やすいです。
また、クロムが作る不動態皮膜は硝酸のような酸化性の酸に対しては強いですが、
硫酸や塩酸のような非酸化性の酸に対しては比較的弱いという特性があります。
そのため、SUS304ではニッケルを8%以上加えてそのような酸への耐食性も向上させています。
※右のイメージ図では便宜上、不動態皮膜の化学式をCrOと描いていますが、実際の主成分は水和オキシ酸化物 (CrOx(OH)2-x・nH2O)というものです。