JISによると、ステンレスは金属組織の種類により、
以下の種類に分類されています。100種類以上ある
ステンレスのうち、市場に出回っているのはほんの数種類
なので、加工するにあたって、下記の鋼種は知らなくても
全然問題はありません。後述する数種類についてある程度の
知識があれば、全く困らないでしょう。
ただ、まぁ知識として記述します。
本来の表面は、ニッケル成分のため白銀色をしています。
焼入れ(熱処理による硬化)が出来ないので、曲げ加工した後に焼入れして
硬化させるといったことはできません。その代わり加工がしやすく、
一般的な使用環境では十分な耐食性・耐熱性・耐寒性のため
広く使用され、最も製造量の多いステンレスになります。
熱処理などにより加工変態を起こし、熱膨張によるゆがみも大きいため、溶接の際は注意が必要です。
一般に550℃を超える温度帯域で優れた機械的性質を示しますが、約600℃~980℃以上で
長時間加熱すると、常温や低温でのじん性が低下すると言われています。
フェライト系とオーステナイト系の中間らしいが、詳細は不明です。
(ニッケル系とクロム系の中間ってどういう状態?)
本来の表面は、クロムを反映して黒っぽい光沢色(クロムメッキに似た色)をしています。
焼入れ(熱処理による硬化)が出来ないので、曲げ加工した後に焼入れして硬化させる
といったことはできません。
加工のしやすさは、マルテンサイト系 < フェライト系 < オーステナイト系ですが、
オーステナイト系のような加工変態が起こらないため、溶接加工等はやりやすいのが特徴です。
500℃を超えると急に強度が落ちてきます。また高温環境下では脆化現象を起こすこともあり、
こうした環境下での構造材料としてはあまり使われない傾向にあります。
特に870℃を超えるような環境では非常にもろくなります。
オーステナイト系よりも磁性があります。
オーステナイト系のような加工変態も許されず、耐食性も求められる使用用途(ボイラー等)のために
開発されたステンレス。
聞いた話だと、以下の三段論法で開発されたようです。
オーステナイト系で発生する加工変態を何とかしたい!
オーステナイト系は、高価な(かつ値段が乱高下しやすい)ニッケルを含むため高価ということも気になる。
ただ、ニッケルを含まないフェライト系(SUS430など)はオーステナイト系に比べ、
耐食・耐熱・加工性に難がある
↓
どうしてもニッケルが嫌なので、それ以外の鉱物を添加したり炭素を減らしたりしてSUS430を
改良してデメリットを克服しよう!
(そんなにニッケルに嫌な思い出でもあったのか?)
↓
高耐食フェライト系ステンレスの完成!
炭素の含有量が多く、焼入れ(熱処理による硬化)ができるという点が最大の特徴です。
なので、曲げ加工した後に焼入れして硬化させるといったことができます。
また逆に、焼き戻しによって幅広い機械的特性を与えることが可能です。
その反面、炭素の含有量が多いために、ステンレスの中では最も錆びやすいです。
500℃付近まではかなり強い引張強さを示しますが、これを超えると強度が急に低下してきます。
添加元素に、モリブデンやバナジウム、タングステン、ニオブなどを入れて高温強度を改善した
タイプもあります。
オーステナイト系ステンレスと比べ、耐食性がやや劣ります。
(オーステナイト系>析出硬化系>フェライト系)
元来、常温(主として550℃以下)での強度を高めたタイプのステンレス鋼材材ですので、
450℃を超えると高温強度は低下してきます。温度が高くなりすぎない環境であれば、
優れた強度を持ちますので、温度帯域を絞って使われることが多いです。
JISでは、上記の5種類の大分類の下にSUS○○○という小分類が計100種類以上定義されています。
ですが、実際はほとんどのものが流通しておらず、使いたくても使えません。
(まぁ、製鉄所を動かすレベルで使用するのであれば、特注で作ってもらえるでしょうけど、
そんな人がいたら、是非ご紹介いただきたいです (m_ _)m オネガイシマス )
先述の通り、一生お目にかからないものがそのほとんどです。
SUS304 |
オーステナイト系 クロムとニッケルの含有量の下限から、「18-8ステンレス」と表記されることもあります。 一般的な使用目的に対しては、耐食性・耐熱性ともに十分で、ステンレスというと、通常このSUS304を 指すくらい、最も一般的に使用されています。 そのため、板・パイプ・アングル・線材・メッシュ等々様々な部材が入手しやすく、 それを加工することで様々な製品ができます。 ただ、高耐食ステンレスに比べ、一般的な使用目的外(塩素や酸の強い環境等)では 比較的腐食がおきやすいです。 溶接の熱影響を受けたところで、応力腐食割れ をおこすこともあります。 (コレは他のオーステナイト系では同じです) 耐熱温度は、700~800℃が目安。低炭素のため溶接はしやすいですが、熱膨張率が大きい (鉄の約1.5倍)ので、熱歪みを抑える加工方法の工夫が必要になります。 (例えば、板の四方を固めた状態で中央を溶接すると、板が波打ちます) その流通性から他のステンレスを語る際に基準になります。 電解研磨により光沢を出すことが可能です。 |
SUS304H |
オーステナイト系 SUS304の中でもより硬い素材。 バネ・強靭鋼として使用されます。 炭素の含有量は各メーカーにより違うが、それ以外はSUS304とほぼ同じ成分。 主に加工硬化により、硬度を高めたもの。 |
SUS304L |
オーステナイト系 SUS304の中でもよりやわらかい素材 |
SUS303 |
オーステナイト系 快削鋼。 切り粉がきれいに出て旋盤加工などの切削に向いているが、逆に曲げ加工がしにくく、溶接もできません。 耐食性もSUS304に比べて落ちます。 ちなみに、フェライト系の快削鋼はSUS416があります。 |
SUS430 |
フェライト系 「18Crステンレス」と表記されることもあります。 ニッケルが含まれないため、SUS304に比べ磁石に付きやすく、耐食性が劣ります。 ただ比較的安価なため、SUS304の値段が高騰するときは必ずと言っていいほどSUS304からの 乗り換えが検討されますが、その耐食性と磁石が付くという性質から、 大抵その検討は結論がでないまま終わります(笑) SUS304に比べ、熱膨張率は低いです。 電解研磨により光沢を出すことができません。 |
SUS316 |
オーステナイト系 「モリブデンステンレス」、「高耐食ステンレス」などと表記されることもあります。 SUS304に比べ、耐食性・耐熱性あります。 SUS304に比べると入手できる材料の形状に制約がありますが、他のステンレスに比べると 比較的手に入りやすく、化学薬品・海水などを扱う環境にはSUS304より向いていますが、 値段も高価になります。 比較的よく使用されることもあり、SUS304とSUS316の判別をする薬品などが売られています。 電解研磨により光沢を出すことが可能。 |
SUS444 |
フェライト系 フェライト系なのに耐食性に優れます。 オーステナイト系で発生する加工変態を防ぎ、かつ耐食性の必要な貯水槽やボイラーのために 開発されたステンレスらしいです。上記「フェライト系-高耐食フェライト系」参照。 |
SUS310 |
オーステナイト系 高耐熱性が特徴。 耐熱性は、SUS304 < SUS316 < SUS309S < SUS310Sの順となるが、価格も相当に高い。 |
SUS301 |
オーステナイト系 バネ・強靭鋼。SUS304より炭素が多めで、主に板バネとして使われる。 SUS304よりもバネ性が高い。板バネの記号は、CSP。 |
SUSXM7 |
オーステナイト系 ヘッダー・転造・深絞り用途。 SUS304に銅を添加したもの。(SUS304Cuとの違いは不明) 加工硬化が少ないため、冷間鍛造(ヘッダー加工)や変形率の大きなプレス加工などに用いられる。 SUS304では、割れてしまうような加工をする場合に使う。 ステンレスのネジ(ビス)などに使われることが多い。 この鋼種だけはなぜかアルファベットで始まる記号がついている(開発時の記号らしい?)。 |